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遺言書作成後に財産を処分したときは、遺言の撤回となるのか?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
遺言書を書いた後に、財産を処分した場合、遺言書の効力はどのようになるでしょうか?
また、遺言書の書換をする必要があるでしょうか?
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
父が亡くなりました。
父の棚を整理していたところ、遺言書が発見され、その遺言書には、
私にA土地を相続させるとの記載がありました。
しかし、A土地は父が生前に売却をしており、既に他人の所有物となっています。
この場合、私は、A土地を相続することができないのでしょうか?
ご回答のポイント
- 遺言書作成後に対象となった財産を処分した場合には、その限度で遺言の撤回とみなされるため、
A土地を相続することはできません。
ご回答
財産処分による遺言の撤回
遺言者が作成した遺言を撤回する場合には、原則として遺言の方式に従って、従前の遺言の全部又は一部を撤回しなければなりません。そのため、遺言者が遺贈しようとした財産を生前に処分する場合には、まず前の遺言を撤回する遺言をして、
前の遺言の効力を失効させた上で、生前の財産処分をすることになります。
しかし、そのような方法は煩雑であるとともに、遺言者による生前の財産処分行為があった場合には、遺言撤回の意思を推測できることから、遺言書作成後に対象財産を処分した場合には遺言を撤回したとみなされます。
前の遺言の存在やその内容を失念するなど遺言者に撤回の意思が認められない場合であっても、あらかじめ争いが生じるのを避け、
遺言者の最終意思の実現を図るため、遺言の撤回が擬制されることになります。
財産処分による遺言の撤回擬制の要件
- 遺言者の行為であること
財産処分による遺言の撤回は、遺言者の意思の推測を主たる立法理由とすることから、
財産処分が撤回権を有する遺言者自身によってなされたものであることが必要です。
遺言者の意思によらない処分行為の場合には、遺言の撤回の効力が生じません。 - 生前処分その他の法律行為であること
生前処分とは、遺贈の目的である特定の権利や物についての処分行為であり、その有償・無償を問いません。
また、その他の法律行為とは生前の処分行為でない法律行為や財産に関係のない一切の法律行為をいい、身分行為等もここに含まれると解されています。 - 抵触する行為であること
遺言の撤回の擬制がなされるためには、遺言の内容と抵触する生前処分その他の法律行為がなされることが必要です。
遺贈の目的物の破棄
遺贈の目的物を生前に処分した場合のみならず、遺言者が生前に故意によって遺贈の目的物を破棄した場合にも、
遺言を撤回したものとみなされます。
この場合も、目的物を生前処分した場合と異ならず、遺言撤回の意思を推測できることから、遺言の撤回とみなすことにしたものです。
破棄とは、物理的に目的物を滅失・毀損する場合だけでなく、経済的価値を失わせる場合も含みます。
まとめ・所感
遺言書作成後に財産処分をした場合、遺言の存在やその内容を失念していたとしても、遺言の撤回の効力を生じることになります。
遺言者の気が付かないうちに遺言撤回の効力が生じて、予期していなかった財産処分の結果となる可能性があることから、
財産処分をする場合には、以前に遺言書を作成していたか否か、作成していたとすればその内容を十分に確認した上で
財産処分をする必要があります。
遺言者が予定する財産処分と遺言内容とが異なる結果となる場合には、遺言書の書き換えを検討してください。
遺言書を書き換えるべきか、そうでないかは、判断が難しいときもあります。
お困りでしたら、当事務所にお気軽にご相談ください。