相続人の所在や生死がわからない…どうする?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
相続が発生した場合、故人の財産を相続人全員で分けるため、遺産分割協議を行います。
ですが、その相続人の所在や生死がわからない場合、どのように手続きをすればいいのでしょうか?
実例をもとに、以下に簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

父が亡くなりました。
父の相続人は、母と私の他に弟が1人いますが、弟は10年前に家を飛び出して以来、消息が分かりません。
私と母だけで財産を分割したいと思いますが、どのようにすればいいでしょうか?

冒頭に書きました通り、遺産分割協議は、相続人全員で、故人の財産をどのように分けるのかを話し合いで決めなければなりません。
弟が消息不明ですと、遺産分割協議ができず、故人の財産はずっと故人名義のままとなってしまい、使うことができません。

この打開策は、弟に『不在者財産管理人』を立てることで解決します。

難しい言葉ですよね…
漢字そのままですが、『弟の財産を管理する人を別に決める』ということです。
以下、流れと手続き方法について、ご説明します。

手続きの流れ

  1. 不在者財産管理人 選任の審判を申し立て
  2. 不在者財産管理人 権限外行為許可審判の申立て
  3. 不在者財産管理人と他の共同相続人とで遺産分割協議成立

手続き方法

STEP

不在者財産管理人 選任の審判を申立て

不在者財産管理人は家庭裁判所に申立てをします。
申立てをする主な理由は、

  • 所在不明となった者に対して権利行使したい場合
  • 所在不明となった者の財産を保護する必要がある場合等

です。
必要な要件を満たすと、家庭裁判所は不在者(弟)に対して必要な処分を命ずることができます。
その代表例が、『不在者財産管理人』の選任です。

家庭裁判所に申立てができる人は、利害関係人または検察官です。
利害関係人とは、不在者の推定相続人、不在者と共同相続人の関係にある者、不在者の債権者等
不在者の財産について法律上の利害関係を有する者です。

STEP

不在者財産管理人 権限外行為許可審判の申立て

『不在者財産管理人』が選任されると、いよいよ遺産分割協議ができる!と思ってしまうのですが、実はそうではありません。
なぜなら、『不在者財産管理人』に与えられた権限は、
保存行為および目的たる権利の性質を変えない範囲内での利用または改良を目的とする行為に限られているからです

難しい表現ですよね…
簡単にいいますと、原則『不在者(弟)の今ある財産を守ることしかできない』ということです。
例えば自宅の屋根が壊れて雨漏りがする場合、これを修繕するのは、保存行為です。

では、遺産分割協議はどうでしょうか?
遺産分割協議は不在者(弟)の今ある財産を守る行為ではなく、財産の変動を生じさせる行為(処分行為)です。
なので、『不在者財産管理人』の権限を超えてしまっているわけです。

そのため、家庭裁判所に権限外行為許可審判の申立てをしなければなりません。
『故人の財産に対して、遺産分割協議により、弟はこれだけ財産を取得することになりますが、よろしいでしょうか?』
と家庭裁判所に事前に許可を得る必要があるわけです。

家庭裁判所は、不在者の権利・利益を不当に害するものではないかどうか を審査して許可するか否かを決めます。

STEP

不在者財産管理人と他の共同相続人とで遺産分割協議成立

家庭裁判所から許可がおりたら、その内容で遺産分割協議書に『弟 不在者財産管理人 〇〇〇〇』という形で署名し、
不在者財産管理人の実印を押印して、遺産分割協議書を成立させます。

まとめ・所感

当事務所のように相続専門で手続きをしていますと、このような事例は意外と対応することが多いです。
特に、お子様がおられず、兄弟相続となっているケースでは、甥姪が相続人となっていて、
ご相続人同士の交流が少ないことから、所在がわからないということがよくあります。

今回のコラムでは簡単に書きましたが、
不在者財産管理人を申し立てる場合、相続人調査~家庭裁判所に申立てする~遺産分割協議成立まで、
専門家でも1年以上かかることは珍しくありません。

ご負担が大きいと感じられることがあると思いますので、このようなケースの場合には、
専門家にご相談ください。

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