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相続分は第三者に譲渡できるって本当!?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
相続が発生した場合、相続人は故人の財産をどれくらい相続するのか、一定の割合(相続分)が決まっています。
この割合を譲渡することができることをご存知でしょうか?
実例をもとに、以下に簡単にまとめました。
ご相談事例
独身の伯父が、多くの遺産を残して死亡しました。
相続人は、伯父の甥・姪 計6人で、私もその1人です。
私には友人からの借金があり、友人に私の相続分を譲渡して清算したいと思っています。
どのようにすればいいでしょうか?
手続きの流れ
- 譲渡人(私)と譲受人(友人)との間で相続分譲渡契約を締結し、相続分譲渡証書を作成する
- 他の相続人に対して、相続分譲渡通知をする
- 譲受人(友人)と他の相続人との間で遺産分割協議を行う
手続き方法
相続分譲渡契約を締結し、相続分譲渡証書を作成する
相続分の譲渡については、その方法について明文がなく、なんらの方式も必要ではありません。
口頭でも差し支えありませんし、有償・無償も問いません。
また、公示方法がなく二重譲渡されても先の譲渡が優先し、対抗要件は問題にならないとする裁判例が多くあります。
ですが、合意の内容を明確にして、後日紛争を防止するために、相続分譲渡証書を作成し、
さらに相続分譲渡通知書も作成して、他の相続人に対して通知することをお勧めします。
相続分の譲渡は、相続人間で遺産分割をする前に行う必要がありますので、注意が必要です。
相続分譲渡の『相続分』とは…
積極財産だけではなく、消極財産も含んだ包括的な相続財産全体に対して、
各相続人が有する持分あるいは法律上の地位の移転とするのが通説です。
相続分譲渡の通知
相続分譲渡の通知については、必要とする説と、不要とする説があり、見解が分かれています。
ですが、そもそも相続分譲渡が認められているのは、
相続分を譲渡したときに、他の相続人がその相続分を取戻しできるから、認められているのです。
難しい言い回しですよね…
何が言いたいかといいますと、
他の相続人に、譲渡された相続分を取戻す機会を確実に与えるために、相続分譲渡通知を作成し、通知しましょう
ということです。
譲渡人(私)以外の相続人全員に、配達証明付き内容証明郵便で送ることをお勧めします。
譲受人(友人)と他の相続人との間で遺産分割協議を行う
譲受人(友人)は、他の共同相続人に対して、遺産分割請求を行います。
相続分譲渡の効果は…
譲受人(友人)は、譲渡人(私)が有していた包括的持分を取得しますので、遺産分割を請求できます。
譲受人(友人)は、遺産分割協議、調停、審判に参加できますし、他の相続人は譲受人(友人)を参加させなければなりません。もちろん、譲渡人(私)は遺産分割請求権を失うことになります。
ご注意いただきたいのは、故人に債務があった場合です。債務も原則相続人が承継するわけですが、譲渡人がその責任を免れるかに関しては学説が分かれているため、慎重な対応が必要です。
まとめ・所感
上記のような事例は稀なケースです。
ですが、昨今『所有者不明土地』が問題となっていますが、その当事者の方は、他の数十人・数百人と枝分かれした相続人との権利を
整理するために、この相続分譲渡を使っていると耳にしました。
国土の22%は『所有者不明土地』との統計(平成29年国交省調査)もありますので、今後も利用するケースが増えるのではないでしょうか。