相続人に任意後見契約を締結している人がいる!どうやって手続きする?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
ご相続が発生した場合、故人の財産を相続人全員で分けるため、遺産分割協議を行います。
ただ、相続人の中に判断能力があまりない人がいて、その人が判断能力があるときに、任意後見契約を締結していた場合、
どのようにすれば遺産分割協議ができるのでしょうか?
先に結論ですが、判断能力がない人は、遺産分割協議(遺産をどう分けるのかの話し合い)はできませんので、
任意後見監督人の申立てをする必要があります。
実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

父が亡くなりました。
父の遺産を、母、兄、私で相続することになりました。
母は現在、認知症のため判断能力がほぼないのですが、

認知症になる前に財産管理について任意後見契約を締結していたようです。
この場合、どのように手続きをすれば良いでしょうか?

ご回答のポイント

  • 任意後見契約の内容を確認します。
    任意後見契約書には代理権目録がありますが、任意後見人の代理権の範囲に遺産分割が含まれているか否かを確認します。また、法務局で登記事項証明書の交付を受けて、代理権の範囲等を調査することもできます。
  • 家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。
    任意後見監督人が選任されれば、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人が本人の代理人として遺産分割の手続きに関与することができます。
  • 任意後見人自身が相続人の一人である場合には、利益相反行為となりますので、
    任意後見人ではなく、任意後見監督人が本人を代理します。

ご回答

STEP

任意後見人の代理権の範囲を確認する

任意後見契約は公正証書によって作成されていますので、任意後見契約書に添付されている代理権目録で、
任意後見人の代理権の範囲に遺産分割が含まれているか否か確認します。
また、任意後見契約は、公証人の嘱託により、法務局で登記されていますので、
登記事項証明書の交付を受けて、代理権の範囲等を調べることも可能です。

登記される事項は以下のものとなります。

  • 任意後見監督人の選任前…本人、任意後見受任者、代理権の範囲
  • 任意後見監督人の選任後…本人、任意後見人、任意後見監督人、代理権の範囲

任意後見人は、法務局から任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した登記事項証明書の交付を受けて、自己の代理権を証明することができる仕組みになっているわけです。
ただし、登記事項証明書の交付請求ができるのは、
本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者等一定の者に限定されています。
これは、取引の安全の保護と本人のプライバシー保護の調和を図る観点です。

STEP

任意後見監督人選任の申立て

任意後見契約の登記がされている場合、精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況にあるときに、
任意後見契約の効力を発生させるためには、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをする必要があります。
この申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者がすることができます。

申立てを受けた家庭裁判所は、医師の判断の結果、その他適当な者の意見を聴いた上で、精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況にあると認められるときは、任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を発生させます(任意後見受任者に不適当な事由がある場合等を除く)。

自己決定の尊重の観点から、任意後見監督人の選任は、本人の申立てまたは同意が要件とされていますが、
本人が意思を表示することができないときは、本人の同意を得ることができませんので、その同意を得る必要はありません。

誰を任意後見監督人に選任するかは、家庭裁判所が決定しますが、適正かつ実効的な監督を確保する観点から、
任意後見人または任意後見受任者の近親者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹)は、任意後見監督人になることができません。
また、任意後見監督人の選任に際して、家庭裁判所は、本人の意見を考慮するものとされています。

STEP

任意後見人による遺産分割

任意後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が発生すると、任意後見人は本人から委託された事務について、
代理権を行使することができます。
この代理権の範囲の中には、遺産分割も含まれていることが通常ですので、
以後、任意後見人が本人を代理して、遺産分割手続に関与することになります。

ただし、任意後見人自身が相続人の一人である場合には、任意後見人が本人の代理人として遺産分割手続に関与することは、
利益相反行為となりますので、許されません。
この場合、任意後見人ではなく、任意後見監督人が本人を代理して遺産分割手続きを行うことになります。

まとめ・所感

成年後見人は家庭裁判所が後見人を選任しますが、
任意後見人はご本人が判断能力がある間に、自分で後見人を選ぶことができるという大きなメリットがあります。
ご信頼されている方に、将来自分の判断能力が落ちたときの後見人となってもらえることは、安心感があるのではないでしょうか。
認知症になる割合は、5人に1人といいますので、ご自身の将来のため、またご家族のためにも、ご検討をいただきたい制度です。
成年後見人については、以下コラムをご参照ください。

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