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相続で取得した土地を手放したい!相続土地国庫帰属制度とは!?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
相続土地国庫帰属制度をご存知でしょうか?
簡単にいいますと、不要な土地、使い道のない土地を国にあげることができる制度です。
聞こえはいいのですが、当然に色々と条件があります。
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
母が亡くなりました。
母の住んでいた住宅とその土地を相続したのですが、私は遠方に居住しており、
母の残した土地・建物を利用する予定がありません。
所有しても管理が難しいです。
ネットを調べていると、国庫へ帰属させることができる制度があると知ったのですが、その手続はどのようになるでしょうか?
また、土地が隣接して何筆かある場合の手続はどうなりますか?
ご回答のポイント
- 相続した土地を国庫へ帰属させたい場合は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての相続土地国庫帰属の承認申請をすることになります。
遺贈により土地の所有権を取得した相続人も相続土地国庫帰属の承認申請をすることができます。 - 法務大臣は、承認申請に係る土地が相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律5条1項各号の事由のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属を承認しなければなりません。
- 承認された場合、承認申請者は、所定の負担金を納付することになり、納付の時に土地の所有権は国庫に帰属します。
また、同一の承認申請者が二筆以上の土地について同時に承認申請する場合は、承認申請書に二筆以上の土地を記載して申請することができます。
ご回答
相続土地国庫帰属の承認申請をする
- 相続土地国庫帰属制度とは?
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相続等により土地を取得した所有者が、法務大臣に対し承認申請をし、審査によって一定の要件を満たすとされたときは、その土地を国庫に帰属させることができるという制度です。
令和5年4月27日から施行されました。
相続土地国庫帰属制度は、相続等により土地を取得しても、その土地を使用する予定もなく、管理も困難な場合などは、
相続登記もしないまま放置し、近隣とのトラブルや将来所有者不明土地となる可能性もあることから、創設されました。 - 申請権者
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相続または相続人への遺贈(以下「相続等」といいます。)により土地の所有権または共有持分を取得した者が申請できます。
土地が共有土地である場合は、相続等によって共有持分を取得した相続人を含む全員で申請する必要があります。
この場合、他の共有者については、相続以外の原因により持分を取得した場合であっても申請することができます。
承認申請者について相続登記がなされていない場合であっても、相続人であることを証する書面(戸籍謄本・戸籍の附票・住民票・遺言書・遺産分割協議書等)を添付すれば申請できます。
申請者は、本人または法定代理人であり、弁護士等による任意の手続代理人は認められていません。
また、業務として申請書等の作成を代行することができるのは、弁護士、司法書士、行政書士に限られています。 - 申請書の提出先
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申請書は土地を管轄する法務局または地方法務局本局に提出します。
- 二筆以上の土地の申請
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承認申請書は土地の一筆ごとに作成する必要がありますが、同一の申請者が二筆以上の土地について同時に承認申請する場合は、二筆以上の土地について同一の承認申請書で申請することができます。
- 審査手数料
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審査手数料は、土地一筆当たり14,000円です。
審査手数料の納付は、承認申請書に審査手数料の額に相当する額の収入印紙を貼付して支払います。
審査手数料は、一旦納付後は返還されません。 - 承認申請ができない土地
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以下の土地は、申請の段階で却下となります。
① 建物の存する土地
② 担保権または使用および収益を目的とする権利(地上権、地役権、賃借権等)が設定されている土地
③ 通路その他の他人による使用が予定されている土地
㋐ 現に通路の用に供されている土地
㋑ 墓地内の土地
㋒ 宗教法人の境内地
㋓ 現に水道用地、用悪水路またはため池の用に供されている土地
④ 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
国庫帰属の承認手続
- 国庫帰属の要件審査
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法務局において、提出された書面を審査し、申請された土地に出向いて実地調査を行い、
承認申請者らから事実聴取や資料の提出を求めるなどの調査をすることができます。
その結果、法務大臣は、
以下の事由に該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければなりません。
① 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のものがある土地のうち、
その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
② 土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地
これに該当する主な事例としては、以下のような土地等となります。
㋐ 果樹園の樹木
㋑ 民家、公道、線路等の付近に存在し、放置すると倒木のおそれがある枯れた樹木や枝の落下等による
災害を防止するため定期的な伐採を行う必要がある樹木
㋒ 放置すると周辺の土地に侵入する等の恐れがあるために定期的に伐採を行う必要がある竹
㋓ 過去に治山事業等で施工した工作物のうち、補修等が必要なもの
③ 除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地
④ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理または処分ができない土地として政令で定めるもの
㋐ 民法上の通行権が妨げられている土地
ⓐ 他の土地に囲まれて公道に通じない袋地
ⓑ 池沼、河川、水路、海を通らなければ公道に出ることができない土地
ⓒ 崖があって土地と公道との間に著しい高低差がある土地㋑ 所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地
不法占拠者がいる場合、隣地から生活排水等が定期的に流入し、土地の使用に支障が生じている場合等
これに該当する主な事例としては、
①第三者に不法に占拠されている場合、
②隣地から生活排水等が定期的に流入し続けている場合、
③特定の管理会社から管理費用を請求されるなどトラブルが発生する可能性が高い(別荘地)場合等
があります。
⑤ 通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する土地として政令で定めるもの
㋐ 災害の危険により、土地周辺の人や財産に被害を生じさせる恐れを防止するための措置が必要な土地
土砂の崩壊、地割れ、陥没、水または汚液の漏出その他の土地の状況に起因する災害の発生または発生
のおそれがあり、被害防止のため、当該土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地
㋑ 土地に生息する動物により、土地や土地の周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
㋒ 国による整備(造林、間伐、保育)が必要な森林(山林)
㋓ 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
㋔ 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき申請者の金銭債務を国が承継する土地
承認・負担金の納付
- 審査結果の通知
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審査を踏まえ、国家帰属の承認・不承認の結果について、申請者に通知が送付されます。
承認する場合には、通知に記載されている負担金額を30日以内に納付します。
30日以内に納付しない場合は、国庫帰属への承認が失効します。 - 負担金の金額
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負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額です。
- 負担金の基準となる土地の区分
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申請があった土地は、「宅地」、「農地」、「森林」、「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて納付が必要となる
負担金の金額を決定します。
① 宅地は、原則20万円ですが、
宅地のうち、都市計画法上の市街化区域または用途地域が指定されている地域については、
面積に応じて算定されます。
面積 50m2以下 地積×4,070円に208,000円を加算
50m2を超え、100m2以下 地積×2,720円に276,000円を加算
100m2を超え、200m2以下 地積×2,450円に303,000円を加算
200m2を超え、400m2以下 地積×2,250円に343,000円を加算
400m2を超え、800m2以下 地積×2,110円に399,000円を加算
800m2を超えるもの 地積×2,010円に479,000円を加算
② 農地は、原則20万円ですが、農地のうち、市街化区域内、農業地区域内または土地改良事業等の区域内になる
農地については、面積に応じて算定されます。
③ 森林は、面積に応じた算定となっています。
④ その他(雑種地、原野等)の土地については、一律面積に関係なく、20万円となっています。
なお、負担金の基準となる地積は、登記上の地積を基準とします。現況の地積で負担金を計算したい場合は、
地積更正または地積変更の登記を行う必要があります。 - 合算負担金の申出
-
隣接する二筆以上の土地のいずれも同一の土地区分である場合、申出をすることで、
それらを一筆の土地とみなして負担金を算定することができます。
この申出はすでに国庫帰属の申請をしている隣地土地の所有者同士(申請者が異なる場合も可能)が
共同で行うことも可能です。 - 国庫への帰属
-
負担金を納付した時、土地の所有権は国に移転します。
所有権移転登記は国が行います。住所変更登記や相続登記がされていない場合、国が代位の登記を行います。 - 不服のある場合
-
却下の決定、承認・不承認、負担金額の通知について不服がある場合は、一般的な行政処分に対する不服申立手続によって争うことになります。
まとめ・所感
読んでいただいた方はお分かりかと思うのですが、相続土地国庫帰属制度はあれど、
どんな土地でも国が引き取ってくれるわけではないということです。
少々話が逸れますが、
この制度は「所有者不明土地」が日本で九州ほどの土地の面積があるために、問題視してできた制度です。
九州くらいの土地が所有者不明ってゾッとしませんか?
この他にも、今年から「相続登記の義務化」もはじまっており、この制度も同様の背景・理由からできています。
日本は世界からみれば、小さな島国です。限られた国土を有効に活用し、国力をあげていってほしい願うばかりです。
本題に戻りまして、この制度は去年できたばかりです。
まだ実例が少なく、迷うことが多いのではないかと思います。
もしこの制度を利用されたい、もしくは検討したい方は、専門家にご相談いただいた方がよろしいかと思います。