公正証書遺言って何?どうやって作成するの?注意することは?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
ご相続対策として、ご生前に財産をだれにどう相続させるのか(遺贈するのか)を決めることができるのが遺言書です。
遺言書には大きく4つ種類があるのですが、その一つに公正証書遺言があります。
公正証書遺言の作成方法について、ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

私は、万が一の場合に備えて遺言書を作りたいと考えています。
自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方が安全であると聞きました。

公正証書遺言の作成方法を教えてください。

ご回答ポイント

  • 公正証書遺言によれば、遺言書の紛失、第三者による変造の危険、方式違反による無効のおそれ、
    文言の疑義の発生等を防止して安全に遺言書を作成することができます。
  • 公証人役場に証人2人とともに行き所定の費用を払えば、公正証書遺言を作成することができます。

ご回答

STEP

公正証書遺言の長所及び短所

長所

①法律の専門家である公証人が作成するので、方式に不備があって無効になったり、
 文言の意義が不明で無効になったりする危険がない


②遺言書の原本が公証役場に保管されるので内容の変造の危険がない

③遺言公正証書の原本が公証役場に保存されるのみならず、 この原本とは別に公正証書の原本を
 電磁的記録化(データ化)したものも保存されるから、 遺言公正証書が紛失・滅失してしまう危険がない

検認の手続が不要である


⑤文字を書くことができない者も作成することができる

短所

①公証人役場に証人とともに行かなければならないなど多少面倒である
(もっとも、遺言者が病気等により公証人役場に行くことができない場合には、
 公証人に病院、自宅まで来てもらうことができます)

費用がかかる

③遺言の存在及び内容が証人等に知られてしまう等

STEP

公正証書遺言の作成要件

  • 証人2人以上の立会いがあること
    公正証書遺言の作成に際しては、証人2人以上の立会いが必要とされます。
    これは遺言者が口授したことが公証人により正確に筆記されていることを確認するためです。
    証人には、①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人はなることはできません。
    したがって、事前に証人になる資格を持っている人2名以上に証人になってもらうように依頼しておく必要があります。

    なお、遺言書作成中は、始めから終わりまで間断なく証人2人以上が立ち会っていることが必要ですので、
    証人を依頼する際には、時間を十分にあけておいてもらうように注意する必要があります。
    証人には信用できる人を選ぶべきです。職業上守秘義務をおっている士業の専門家に証人となってもらえば、
    遺言書の内容についても秘密にして遺言をすることができるでしょう。
    なお、民法の一部を改正する法律(平成30年法律59号)により、成年年齢が18歳に引き下げられましたので、
    令和4年4月1日施行日以降は、18歳以上であれば証人となることができます。
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
    遺言者は、公証人に対して遺言の内容を直接口頭で伝えます。
    覚書を口授の補助として利用することもできます。代理人による口授は認められていません。
    なお、遺言者が口をきくことができない者の場合には、「口授」に代えて「通訳人の通訳(手話通訳等)による申述」
    又は自書により遺言書の趣旨を公証人に伝えることによって公正証書遺言を作成することができます。
  • 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
    遺言者が、耳が聞こえない者の場合には公証人は、「読み聞かせ」に代えて「通訳人の通訳」又は「閲覧」により筆記した内容の正確性を確認することで、公正証書遺言を作成することができます。
  • 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し押印すること
    ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
  • 公証人が、その証書が1~4の方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名押印すること
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用意するもの

公正証書遺言を作成する際には、以下のものをあらかじめ用意しておく必要があります。
なお、実際には、公証人と打合せをする際に必要な資料が求められることになりますので、
その際には資料を追加できるように準備する必要があります。

  • 遺言者の実印及び印鑑証明書(3か月以内)
    遺言者本人か否かを確認するために必要となります。
    もっとも、外国人の場合には、新たに始まった在留管理制度により発行された在留カード(あるいはパスポート、運転免許証)及び改正後の住民基本台帳法に基づき作成・交付を受けた住民票の写しによって代替できる場合もあるようですので、
    公証役場へ確認してください。
  • 相続人の戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)及び住民票、受遺者の住民票
    (住民票交付請求において、本人や同世帯の人間以外からの交付要件が厳格化される傾向にあるので、受遺者本人に入手を依頼すべき場合もあります)
    遺言書を正確に作成し、後の紛争を防止するために必要になります。
  • 各証人の住民票及び証人認印
    証人が欠格者である未成年者であるか等を判断するために必要になります。
  • 不動産登記事項証明書(登記簿謄本)及び固定資産税評価証明書
    遺産に不動産がある場合には必要になります。前者は遺言書を正確に作成するため、
    後者は公正証書遺言の作成手数料を算定するために必要になります。
  • 預金通帳及び株券の写し
    遺産に預金や株式がある場合には必要になります。
  • 法人登記事項証明書、代表者の印鑑証明書
    受遺者が法人の場合に必要になります。
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公正証書遺言作成の費用

公正証書遺言を作成する場合、公証人に対し手数料を支払う必要があります。
公証人の手数料については、目的物の価額に応じて、公証人手数料令(別表)において次のように定められています。
下記の手数料額に1万1,000円を加算した額が公正証書遺言作成の費用となります。

目的物の価額手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで1万1,000円
1,000万円まで1万7,000円
3,000万円まで2万3,000円
5,000万円まで2万9,000円
1億円まで4万3,000円

(注)
1
①目的財産の価額が1億円を超えて3億円以下の場合には、5,000万円増える毎に1万3,000円が加算
②3億円を超えて10億円以下の場合は、5,000万円増える毎に1万1,000円が加算
③10億円を超える場合には、5,000万円毎に8,000円が加算
されることになります。
なお、上記手数料は、相続人あるいは受遺者1人当たりのものです。
複数の者に相続あるいは遺贈する場合には、全員分の手数料を算出する必要があります。

2
遺言者が病気等で公証人役場に赴くことができず、公証人が出張して作成した場合には、手数料が50%加算されます。
このほかに公証人の旅費、日当が必要になります。

まとめ・所感

公正証書遺言は、公証人によるチェックが入り、遺言の内容が明確になり後日の紛争を防止することができますので、
せっかく遺言書を書くのであれば、やはり公正証書遺言をお勧めします。
遺言書を書く大きな理由の一つは、係争となることの防止だからです。

ただ実際の公証人とのやり取り、文言の作成については、専門的な知識が必要になる場合もありますので、
事前に専門家に相談するのがよいと思います。
当事務所は公正証書遺言の作成のサポートも行っておりますので、ご相談ください。

また、自筆証書遺言の作成方法・留意点については、以下コラムをご参照ください。

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