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遺産分割後に遺言書が見つかった…どうする?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
ご親族がお亡くなりになり、その相続人全員で、遺産について遺産分割協議が終わり、ホッとしていたら、
引き出しから遺言書が見つかったというケースです。
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
父が亡くなりました。
母、姉、私、弟の4人の相続人全員で、父所有の土地を母が単独で相続するという内容の
遺産分割協議を行いました。
ところが、その後、実家に帰って父の部屋を片付けているときに、
箪笥の中から父の遺言書が出てきました。
遺言書には、母ではなく姉1人にその土地を相続させると書かれていました。
既にしてしまった土地の遺産分割協議の効力はどうなってしまうのでしょうか?
ご回答のポイント
- お姉様が、遺言の内容を知った上で既に行った遺産分割協議の内容に同意するのであれば、
遺産分割協議はそのまま有効となり得ます。 - お姉様が、その遺言の存在を知っていたならばそのような遺産分割協議の意思表示はしなかったという場合には、
遺産分割協議が無効となる可能性があります。
ご回答
遺言書の取扱い
まず、遺言書の検認を行います。遺言書の検認手続については、以下コラムをご参照ください。
また、遺言の有効・無効を判断し、遺言が無効であれば、既に行われた遺産分割協議は、当然その遺言の影響を受けることはなく、なお有効です。
他方、遺言が有効である場合は、既に行われた遺産分割協議の効力について、STEP2・3のとおりに判断していくことになります。
遺言と異なる遺産分割協議の効力
裁判例では、
特定の遺産の遺贈を受けた相続人が、遺言の内容を知りながら、他の共同相続人との間で遺言と異なる遺産分割の協議をした場合には、遺贈の全部又は一部を放棄したものと認められ、遺産分割の協議は有効になると判断されています。
この考え方によれば、お姉様が、発見された遺言書の内容を知った上で、他の共同相続人の方々との間でその遺言と異なる内容の遺産分割協議を有効とすることに同意するのであれば、その遺産分割協議はそのまま有効となると考えられます。
遺言発見前に行われた遺産分割協議の効力
お姉様が、その遺言の存在を知っていたならばそのような遺産分割協議の意思表示はしなかったという場合には、
遺産分割協議が無効となる可能性があります。
遺言で土地の分割方法が明瞭に定められており、お姉様がその遺言の内容を知り、その遺言の存在を知っていれば土地をお母様が単独で相続する旨の遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高い場合には、
既になされた遺産分割協議は、錯誤により取消しとなる可能性があります。
蓋然性とは…
法律用語にはよくでてくる「がいぜんせい」。難しい言葉です…
「そうなる確率や可能性が当然のように高いこと」と読み替えていただけるとわかりやすいと思います。
まとめ・所感
このような事例は、実は意外とあります。
相続対策として遺言書を書くことは、メディアでも多く取り上げられていますし、当事務所のような業務をしている士業や信託銀行等が、よく『遺言セミナー』を開催していますので、かなり知られているからということもあるでしょう。
とても良いことではあるのですが、相続人を混乱させてしまう遺言書の残し方は、やはりよくありません。
事例のように、
遺産分割協議を行った後になって遺言が発見された場合に、既に行った遺産分割協議を有効とすることができるかどうかを判断するためには、単にその受遺者が自らの法定相続分があることを知りながら遺産分割協議を行ったということだけでは足りず、
受遺者が発見された遺言の内容を知り、その上で既に行った遺産分割協議を有効とすることに同意するかどうかを確認することが必要
となります。
揉め事の火種になり得ますので、せっかく遺言書を書くことを決めたなら、ご相続発生後にすぐ発見してもらえる方法で、
保管していただければと思います。
いくつか選択肢がありますので、お悩みの方は当事務所にお気軽にご相談ください。