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死後事務委任契約があるけど、相続人は何もできないの!?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
ある人がお亡くなりになられた場合、故人の財産について相続人間で遺産分割協議を行いますが、
それとは別に死後事務委任契約というものがあります。
死後事務委任契約とは、
自分の死後に生じる葬儀や、債務の支払等(医療費、入院費、施設利用料の支払等含む)を、生前に委任しておく契約です。
よくあるケースでは、相続人と不仲で死後事務を任せたくない、相続人がいない、身寄りがいない等です。
この中の『相続人と不仲で死後事務を任せたくない』というケースで死後事務委任契約があった場合、相続人は何もできないのでしょうか?
実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
父が亡くなりました。
生前にAさんと死後事務委任契約をしていて、Aさんに葬儀と老人ホームの解約、解約金の受領、債務の支払等を委任して、300万円預けていました。
私は父の長男ですが、
死後事務委任契約に書かれていることは何も手をだせないのでしょうか?
死後事務委任契約はどんなことも委任できるのでしょうか?
回答の流れ
- 死後事務委任契約とは?
- 葬儀は相続人ができる?
- 預託金の精算等は相続人ができる?
- 相続人による死後事務委任契約は解除できる?
回答
死後事務委任契約とは?
委任者(父)が受任者(A)に対し、
自分の死後に生じる葬儀や、債務の支払等(医療費、入院費、施設利用料の支払等含む)を、生前に委任しておく契約です。
委任契約というのは、本来当事者間の個人的な信頼関係を基礎とする契約ですので、当事者の一方が死亡したときは終了します。
なので、死後事務委任契約は委任者(父)の死亡によって終了しそうですが、
判例では、
自己の死後の事務を含めた法律行為等の委任契約は、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意を包含する趣旨のものであるとして、効力を否定していません。
難しい言い回しですね…
簡単にいいますと、亡くなった後のことについて生前に契約してるんだから、効力は否定できないでしょということです。
葬儀は相続人ができる?
結論、相続人(私)が、葬儀を行うことは可能です。
委任者(父)が受任者(A)に葬儀を委任しているからといって、相続人(私)に葬儀を行う権限が無くなるわけではありません。
葬儀を行う権限がだれにあるのかは、法律の規定がなく、その地方または親族団体内における慣習もしくは条理に従って決まります。実際上、祖先の祭祀主宰者としての地位を承継した者が葬儀方法の判断権を有することが多いです。
預託金の精算等は相続人ができる?
結論、相続人(私)が、老人ホームの解約金等を受領することが可能です。
受任者(A)は、死後事務の終了後に、委任者(父)から預かっている300万円の預託金を含めて金員等を精算します。
死後事務終了後に、受任者(A)が保管している金員等を誰に引き継ぐかも、通常、死後事務委任契約で定められていますので、
この定めに従って処理します。
一方、相続が開始すると、相続人は原則、被相続人(父)の財産に属した一切の権利義務を承継しますから、事例のような
老人ホームの解約に関する権利義務や債務等は相続人に承継されます。
したがって、相続人もまたそれらの権利行使、義務履行をすることができるわけですので、
老人ホームの解約金等を受領することは可能です。
相続人による死後事務委任契約は解除できる?
結論、特段の事情がない限り、相続人は解除することができません。
死後事務委任契約が委任者の死亡後も効力があることは、STEP1にて記載の通りです。
それなら、その効力は委任者(父)の死亡によって、相続人が委任者の地位を承継するのでは?となり、理論上、
相続人が委任契約の解除権を行使して、死後事務委任契約を終了させることができそうです。
ですが、それでは委任者(父)の企図が実現されない結果となってしまいます。
平成21年の判決で、死後事務委任契約は、特段の事情がない限り、委任者の地位の承継者が委任契約を解除して終了させることを許さない合意も包含する趣旨と解すべきであるとしています。
またまた難しい言い回しです…
簡単にいいますと、
委任者(父)が、『相続人(私)が契約を解除することは許さない』ということも含んで死後事務委任契約してるでしょ
ということです。
まとめ・所感
遺言書や遺産分割協議といった言葉は、テレビでも必要性を採り上げられることが増えたため、ご存知の方が増えたと感じます。
一方、死後事務委任契約は、なかなか馴染みがないのではないでしょうか。
冒頭にも書きましたが、特に、相続人がいない、身寄りがいない等のケースでは、亡くなられた後に手続きをする人がいないことが多いため、死後事務委任契約を締結されていたほうがよろしいかと思います。
これから高齢社会がますます進みますので、この手続きも認識が拡がればいいなと思います。