厚生年金の被保険者が亡くなった…受給できる年金等について解説します!

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
若くしてお亡くなりになった方が、厚生年金被保険者であった場合、どのような手続きをすればいいでしょうか?
故人が厚生年金の受給者であった場合の手続きについては、以下をご参照ください。

実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

10年間会社勤めをしていた35歳の夫が亡くなりました。
病気療養のために退職し、入院をしていたのですが、病状が悪化しました。

私は現在32歳ですが、小学生の子が2人います。
遺族年金を受けたいのですが、どのような手続きをすれば良いでしょうか?

ご回答ポイント

  • 厚生年金の被保険者期間中の傷病がもとで初診日から5年以内に死亡したときは、遺族厚生年金を受けることができます。
  • 遺族厚生年金について、配偶者は受給資格があります。
  • 遺族基礎年金(国民年金)を併給できる可能性があります。18歳未満の子が2人いますので、子に対する加算額があります。

ご回答

STEP

遺族給付の請求

支給要件

遺族厚生年金の支給要件は次のとおりです。

  • 被保険者が死亡したとき
  • 被保険者の資格喪失後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき
  • 障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る)または、
    保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が死亡したとき

保険料納付要件の特例
原則として、死亡した者について保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要(上記①②)です。
ただし、死亡日が令和8年4月1日前で、死亡日に65歳未満であるときは、死亡月の前々月までの1年間が保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)で満たされていれば要件に該当する特例があります。

受給権者の収入要件

受給権者の年収が850万円未満であることが必要です。
ただし、おおむね5年以内に定年退職等で収入が850万円未満になることが明らかな場合は、
会社の就業規則等で退職年齢を明らかにできる書類を添付することにより、遺族厚生年金を受給することもできます。

遺族の範囲

被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、
その者との生計維持関係のある配偶者、子、父母、孫および祖父母となりますが、
妻以外については以下の通り、年齢制限があります。
ただし、夫が55歳以上であって遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給することができます。

  • 子と孫については、満18歳に達する日の属する年度の年度末までにある者、または障害等級の1級、2級の障害の状態にある20歳未満の者であって、現に婚姻をしていないこと
  • 夫、父母、祖父母については、被保険者または被保険者であった者の死亡当時55歳以上である者
    ただし、遺族厚生年金は60歳から支給されます。
遺族の順位

1位:配偶者・子(※)
2位:父母
3位:孫
4位:祖父母
となり、先順位の遺族から後順位の遺族への転給はありません。
(※)第一順位の配偶者・子は、1位:子のいる妻、2位:子、3位:子のいない妻、4位:夫
の順となり、先順位者が受ける場合は、後順位者は支給が停止されます。

妻の受給期間

前述の通り、妻の受給権については、年齢制限はありません。
ですが、受給期間については年齢によって違いがあります。
相談者は以下に該当しませんので、一生涯受給することができます。

①65歳未満で子のない妻が受けられる遺族厚生年金
 ・子のない30歳未満の妻の場合
  夫の死亡当時30歳未満の妻は5年間の有期年金になります。
 ・子のない30歳以上の妻の場合
  夫の死亡当時30歳以上の妻は65歳に達するまで受けられます。
 ・子のない40歳以上65歳未満の妻の場合
  夫の死亡当時40歳以上の妻は40歳から65歳までの間、遺族厚生年金の他に中高齢寡婦加算(遺族基礎年金の4分の3) 
  が加算されます。

②65歳以上で子のない妻が受けられる遺族厚生年金
 平成19年4月1日までは、原則、遺族厚生年金か老齢厚生年金のどちらを受けるか選択することとなっていました。
 しかし、平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは、自分自身が納めた保険料を年金額に
 反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある人については、老齢厚生年金を全額支給し、
 遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止をなります。
 そのため、遺族厚生年金を受給する妻が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合には次のいずれかで高い額が
 自動的に算出されます。
 ・自分の老齢厚生年金
 ・自分の老齢厚生年金の2分の1と遺族厚生年金の3分の2とを合算した額

期間の特例

遺族厚生年金の受給要件を満たしているが、厚生年金の加入期間が受給権の発生する300月に満たない場合を
短期要件といい、300月とみなして遺族厚生年金の計算をする特例があります。
一方、遺族厚生年金の受給要件を満たし、厚生年金の加入期間が300月以上ある場合を長期要件といい、短期要件とは違い、実際に加入していた月数をもとに計算します。
短期要件は平均標準報酬月額(平成15年3月以前)1000分の7.5、平均標準報酬額(平成15年4月以降)1000分の5.769として一律の乗率をかけるのに対して、長期要件は、1000分の10~7.5、1000分の7.692~5.769の範囲の乗率を生年月日に応じた率となります。

遺族厚生年金の受給額

原則は、報酬比例部分の乗率は、1000分の7.125 と 1000分の5.481になっています。
ですが、改正前の1000分の7.5 と 1000分の5.769から引き下げられた結果、年金額が低くなってしまうため、当分の間、年金額を保証するために改正前の計算方法で得た額と改正後の額とを比較して高い額が支給されています。

計算方法→日本年金機構HP

提出時期

支給事由が生じた日の翌日から5年以内

提出者

優先順位の高い順に、①配偶者または子、②父母、③孫、④祖父母

提出先

事業所を管轄する年金事務所

STEP

遺族基礎年金(国民年金)の併給

この事例ですと、遺族厚生年金と遺族基礎年金を併給できる可能性があります。
以下コラムにて遺族基礎年金の要件等をご確認ください。

まとめ・所感

年金や健康保険関連の手続きは、人それぞれ加入歴等が違うため、事前に市区町村や年金事務所等へ問い合わせすることをお勧めします。
今回は、遺族厚生年金を受給することができ、さらに遺族基礎年金の併給もできる可能性がある事例でした。
健康保険や年金は手続き自体はそれほど複雑ではないのですが、
加入歴、受給歴、年齢、婚姻期間等によって、申請内容が変わるため、すべてを把握するのはなかなか難しいのではないかと思います。
当事務所では、ご相続発生後の手続きに年金や健康保険関連の手続きが漏れていないのかも、確認させていただいております。
お悩みの方がおられましたら、お声掛けください。

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日程を調整いたしますので、事務所にご来所の際も事前にご連絡をお願いいたします。

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