相続した不動産の名義が先代のまま!?どうする?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
故人の財産について、財産調査をしたところ、所有している不動産の名義が先代(先々代以前)のままだったということは、よくあります。
先代のときに、遺産分割協議自体していないか、もしくは遺産分割協議はしたけれど、相続登記はしていないか、
今回の事例のように数次相続があった場合等、理由は様々です。
どのように手続きをすれば良いか、実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

父が亡くなりました。
相続人は兄と私の2人です。

その後、父の遺産である不動産について相続登記がなされないまま、兄が急死しました。
兄の相続人は、兄の妻と兄の子(長女)の2人です。
そこで、私と亡き兄の妻と長女の3人で協議をしたところ、亡き父の遺産である不動産は、

亡き兄の妻が取得することになりました。
この場合、相続登記の手続はどのように行うのでしょうか?

ご回答のポイント

  • 父の死亡によって開始した相続(第1の相続)について遺産分割協議をし、次いで兄の死亡によって開始した相続(第2の相続)について遺産分割協議をするのが原則ですが、両者を一緒に行うことも可能です。
  • 遺産分割協議書についても、1つの遺産分割協議書に第1の相続についての協議事項と第2の相続についての
    協議事項をまとめて記載することができます。
  • 登記についても、第1の相続についての相続登記と第2の相続についての相続登記を順次申請するのが原則ですが、本事例のような場合には、2つの相続についての登記を1件の登記として申請することができます。

ご回答

STEP
数次相続の場合の遺産分割協議
数次相続の遺産分割協議

登記実務では、既に開始した相続による登記が未了の間にその相続人が死亡して第2の相続が開始した場合を、
数次相続と呼びます。
数次相続について遺産分割協議をする場合、まず、第1の相続について遺産分割協議をして相続財産の帰属を確定した後、
第2の相続について遺産分割協議をし、第1の相続によって承継した相続財産についての帰属を決定するのが本来のあり方です。
しかしながら、第1の相続の相続人と第2の相続の相続人の合意が得られるのであれば、
2つの遺産分割協議を同時に行い、
現在の登記名義人(第1の相続の被相続人)から第2の相続の相続人への遺産相続を決定することも可能です。
この場合、第1の相続の相続人の全員と第2の相続の相続人の全員が遺産分割協議に参加していることが必要です。

数次相続の場合の遺産分割協議書

数次相続の遺産分割協議を一括して行う場合には、1通の遺産分割協議書に第1の相続についての協議事項と第2の相続についての協議事項をまとめて記載することができます(第3の相続、第4の相続…と相続が重なった場合も同様です。)。
第3の相続、第4の相続…と相続が重なった場合には、相続人の数も多数になり、相続関係も複雑になります。
そのような遺産分割協議書を作成する場合、協議内容に矛盾が生じないように、
協議に参加している相続人がどのような立場で遺産分割協議に参加しているかを明らかにしておくことが大事です。

例えば、
相続人の記名欄にそれぞれ被相続人の名前を冠して「〇〇相続人」や「〇〇の相続人」の肩書きを、
第2の相続以降の相続人には「〇〇相続人〇〇の相続人」の肩書きを、
2つの相続の相続人を兼ねている相続人については「〇〇相続人兼〇〇相続人」の肩書きを付けたりするといった具合です。

共同相続における権利の承継の対抗要件

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分等を超える部分については、
登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができませんのでご注意ください。。

STEP
数次相続の場合の相続登記
相続登記の申請の義務化

令和6年4月1日以後は、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、
自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、
所有権の移転の登記を申請しなければならなくなりました
正当な理由がないのに申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処せられるため注意が必要です。

そのため、3年以内に遺産分割が成立しない等の事情により相続登記の申請が難しい場合においては、
3年以内に相続人申告登記の申出(法定相続分での相続登記の申請でも可)を行います。
そしてその上で、遺産分割成立日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請をしなければなりません。

相続人申告登記とは…
相続登記の義務化に伴い、相続人が申請義務を履行することができるようにする観点から、
所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らがその相続人である旨を登記義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなす相続人申告登記が設けられました。
3年以内に遺産分割が成立することが困難と見込まれる場合、
申請義務の履行期間内に相続人申告登記申請を行うことが考えられます。

中間省略相続登記の要件

数次相続の場合にも、第1の相続についての相続登記と第2の相続についての相続登記を順次申請するのが原則です。
しかし、中間の相続(第1の相続)が相続人の1人の単独所有となるときには、中間の相続登記を省略して
所有権登記名義人(第1の相続の被相続人)から直接に第2の相続の相続人への相続を原因とする所有権移転登記をすることができます。

これは、
中間の相続が単独相続となるような場合には、登記記録の内容を工夫することで2つの物権変動を公示することが可能であり、また、戸籍事項証明書等の信頼性の高い添付情報により不実な登記の出現を避けることが可能なために
例外的に認められたものです。
第1の相続が単独相続となる場合としては、相続人が1人しかいない場合のほか、
本事例のように遺産分割によって単独所有となる場合、他の相続人が相続放棄をしたために相続人が1人となる場合などを含みます。

中間省略相続登記の登記申請

数次相続で中間省略登記を申請する場合、
登記申請書に記載する登記原因として「平成〇年〇月〇日A(第1の相続の相続人)相続 平成〇年〇月〇日相続」
というように第1の相続と第2の相続の相続開始日を併記することで、各相続の経緯を明らかにします。

まとめ・所感

今回の事例では、相続人が少ないため、手続きの負担は比較的大きくならないのではないかと思います。
ですが、冒頭書きました通り、先々代以前の方の名義のままであったり、それが兄弟相続も含んでいる場合等は、
相続人の数が数十人、数百人となることもありますので、対応が困難となります。
そのようなケースであっても相続登記の申請は義務化されていますので、相続人申告登記をして過料から逃れるようにしてください。
もちろん本題の相続登記はしていかなければなりませんから、数多い相続人と接触をしていかなければならないわけですが、
このケースの場合は、ご自身でやっていくのは極めて困難だと思います。是非専門家にご相談ください。
以下、数次相続及び、相続分の譲渡、相続土地国庫帰属制度について、関連コラムです。ご参照ください。

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