遺留分侵害額請求を行使するためにはどうするのか?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
相続人(兄弟姉妹除く)には遺留分という権利があり、被相続人の財産を一定割合もらうことができます。
遺言書等でその遺留分が侵害された場合、財産をもらった人に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

夫は、唯一の遺産である不動産を長男に遺贈しました。
配偶者の私と二男は、遺留分侵害額請求をすることができるそうですが、その方法を教えてください。

ご回答のポイント

  • 内容証明郵便(配達記録付き)によって長男に対して遺留分侵害額請求権を行使することをお勧めします。
  • 遺留分侵害額請求権は、夫が死亡し、
    長男に遺産全部を取得させるという遺言書の内容を知った日から1年以内に行使する必要があります。

ご回答

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遺留分侵害額請求権

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)に、法律上留保することを保障された相続財産の一部をいいます。
被相続人が自己の財産を贈与又は遺贈し、遺留分権利者が遺留分に相当する財産を受け取ることができない場合
遺留分権利者は、贈与又は遺贈を受けた者(受贈者)に対し、遺留分を侵害されたとして遺留分侵害額請求権を行使できます。
この遺留分侵害額請求権は形成権であり、同請求権の行使により遺留分権利者の受贈者に対する金銭支払請求権が発生します。
そして、遺留分権利者は、この金銭支払請求権を行使することにより、遺留分侵害額を回復することができます。

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遺留分侵害額請求権者

遺留分を有する者を遺留分権利者といいます。
遺留分権利者は、兄弟姉妹を除く法定相続人です。
例えば、被相続人の配偶者、子、直系尊属が遺留分侵害額請求権を有します。
遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外は2分の1とされています。
相続開始後の具体的な遺留分侵害額請求権は財産権であり、帰属上の一身専属権ではありませんので、
遺留分権利者の承継人もこれを行使することができます。
承継人とは、遺留分権利者の相続人、包括受遺者、相続分の譲受人など包括承継人はもちろん、特定承継人、例えば各処分行為に対する個別的な侵害額請求権の譲受人も含まれます。

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行使方法

遺留分侵害額請求権は形成権ですから、その権利行使は、受贈者又は受贈者に対する意思表示によってなせば足り
必ずしも裁判上の請求による必要はありません。
したがって、遺留分侵害額請求権者による侵害額請求の意思表示は、訴訟や調停の場で行使することはもちろん、
理論上は口頭で行使することも可能です。
しかしながら、遺留分権利者が受贈者等に対して、後述する時効期間内に遺留分侵害額請求を行った事実の立証のため
実務上は、遺留分侵害額請求については、受贈者等に対して配達記録付きの内容証明郵便によって行使するのが一般的です。
遺留分侵害額請求権を行使する際には、遺留分権利者は被相続人の相続財産の詳細までは分からないことも多いと思われます。
そのため、遺留分侵害額請求権を行使する書面においても、被相続人の財産の詳細を掲げる必要はありません。
この点、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合に、遺留分減殺請求権を有する相続人が、
遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺(侵害額請求権行使)の意思表示が含まれると解すべきであるとした最高裁判例があります。

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遺留分侵害額請求権行使の相手方

遺留分侵害額請求権行使の相手方は、受遺者又は受贈者です。
特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)により財産を承継した相続人や相続分の指定を受けた相続人も、遺留分侵害額請求の相手方となります。

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遺留分侵害額請求権の消滅時効・除斥期間

遺留分侵害額請求権を行使できる期間について、平成30年法律72号改正民法1048条は
「遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは、
時効によって消滅する。相続開始の時から10年経過したときも同様とする。」と規定しています。
この1年の期間制限は消滅時効の規定であり、10年の期間制限は除斥期間の規定と解釈されています。

除斥期間とは…
ある権利の行使期間のことを指します。食べ物の賞味期限とイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
多くの場合、権利関係の早期確定のために設けられます。
ある権利につき、除斥期間を徒過すると、当該権利の行使はできなくなります。

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消滅時効における「知った」の意味

遺留分侵害額請求権を行使すべき贈与又は遺贈があったことを「知った」とは、贈与等の事実に加え、
これに対して、遺留分侵害額請求権を行使できるものであることを知った時と解されています。
遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権を時効消滅させないよう、知った時点で、遺留分侵害額請求権を行使しておくのが無難です。

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金銭債権の消滅時効

遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行使することによって生じる金銭債権は、通常の金銭債権となりますので、
消滅時効は遺留分侵害額請求をした時点から5年間となります。
すなわち、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をした時点で、「権利を行使することができることを知った時」に該当するため、
消滅時効期間は5年間となります。

まとめ・所感

ご相談やご提案をする際、必ずといっていいほどお話するのがこの遺留分です。
今回の事例では、遺留分侵害請求の行使方法について書きましたが、本音はこの請求が発生しないように、
ご生前に遺言書を書いてほしいと思っています。
理由としては、遺留分の主張は揉め事に発展しやすいからです。
また、遺言書を書いていたとしても、その内容が遺言者が意図しないところで、遺留分侵害となっていることもあります。
遺言書は揉めないための予防で書きますので、これでは残念な結果となってしまう可能性が高いです。
ご自身の財産をすべて洗い出し、遺留分や納税資金の確保等を見極めた上で遺言書を書くことを強くお勧めしたいと思います。
複雑な計算もありますので、是非専門家にご相談ください。

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