「相続させる」と書かれた遺言書の効果と、「遺言執行者」の役割について

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
「相続させる」と書かれた遺言書が遺されており、その遺言書に「遺言執行者」が指定されていた場合、
相続人の権利と遺言執行者の役割にはどのような関係があるのでしょうか?
法的な性質と執行行為について考えてみました。

目次

「相続させる」遺言には執行行為は必要はないのか?

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「相続させる」文言の遺言の法的な性質(不動産の場合)

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」という文言の遺言の法的性質については、
遺言者の記載から遺贈であることが明らかであるか遺贈と解すべき特段の事情がない限り、
遺産分割の方法の指定とされますので、遺言書に記載された遺産は何らの行為を要せずして(遺産分割も不要です)、
被相続人の死亡の時に直ちに相続人が確定的に取得することとなります。
なお、この「特段の事情」については、遺言作成の前後の事情、被相続人の生前の言動、
遺言どおりに分割された場合に不都合はないか、遺言の効力を維持することで相続開始後の方が混乱を招かないか等諸般の事情を総合的に慎重に検討する必要があります。

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「相続させる」旨の遺言について執行行為の余地はあるか(不動産の場合)

上記のとおり、被相続人死亡の時に直ちに相続人が遺産を確定的に取得するなら、
相続人が単独で移転登記等の手続も行うことができるということになります。
なので、遺言執行者として執行行為の余地はないようにも思われますよね。
しかし、最高裁平成11年12月16日判決(判時1702・61)は、相続させる遺言が、即時の権利移転の効力を有するからといって、
当該遺言の内容を具体的に実現するための執行行為が当然に不要になるというものではないと判断しましたので、
遺産の性質によっては遺言執行者において執行行為を行う必要があるものもあります。
以下、不動産と預貯金にわけてご説明します。

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「遺言執行者」の役割(不動産の場合)

前述のとおり、「特定の遺産を特定の相続人に相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)は、
原則として遺産分割方法の指定と考えられますから、被相続人の死亡時に直ちに当該財産が当該相続人に、「相続」を原因として承継されます。そのため、「相続」を原因とする所有権移転登記は、当該相続人が単独で申請することができます

令和5年4月1日より、相続人に対する遺贈の場合においても、相続人(受遺者)は単独で所有権移転登記の申請ができるようになりました。

他方、特定財産承継遺言があったときは、
遺言執行者は、当該相続人が対抗要件を具備するために必要な行為をすることができるとの規定が新たに設けれました。
そのため、特定承継財産が不動産である場合、
当該不動産を承継する当該相続人のみならず、遺言執行者も所有権移転登記の申請権限があることになります。

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銀行預貯金の場合

特定承継財産が預貯金債権である場合、
遺言執行者は、①預貯金の払戻請求、及び②預貯金契約の解約の申入れをする権限を有します。
ただし、遺言者がその遺言で別段の意思を表示した場合は、遺言者の意思に従います。

なお、預貯金契約の解約の申入れは、遺言で対象とされた財産が当該預貯金債権の「全部」である時に限ってすることができます。
すなわち、預貯金契約の解約は、預貯金契約者としての地位を承継した共同相続人全員によってされなければならず、
預貯金債権の一部についてのみ特定財産承継遺言がされたにすぎない場合、当該部分に係る預貯金の払戻請求は、遺言中に別段の意思が示されていない限り、遺言執行者が行うことができます。

まとめ・所感

「相続させる」旨の遺言でも、遺言執行者には権限が与えられていますので、遺言執行者の指定を書いておくことをおすすめします。
何ができて何ができないのかを把握するのは難しいですし、指定していたほうが相続手続きが早くできる可能性が高いためです。
ただ、遺言執行者に指定された相続人が遺言者より先に死亡した場合には、その代襲相続人に相続させる意思があったと解される場合を除き、当然に失効するとされています。
なので、この場合、執行行為ができませんのでご注意ください。
遺言は、法的効力をもたせるために要件が厳しく、また遺言の書き方も工夫が必要です。
1回で対策を終えてしまいたい、万全な遺言を遺しておきたい等ありましたら、当事務所がサポートさせていただきます。
是非お問い合わせくださいませ。

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