遺言を作成するときの証人や立会人は誰にするのか?

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
公正証書遺言を作成するためには、証人(立会人)2人の立会いが必要ですが、この証人(立会人)はだれがなれるのでしょうか?
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

公正証書遺言を作成しようと思っているのですが、証人(立会人)が2人必要と聞きました。
私には、妻と子と兄弟がおり、また、子には配偶者もいます。
このような場合、遺言作成の際の証人・立会人に①兄弟、②子の配偶者がなることができるでしょうか?

ご回答のポイント

  • ①兄弟については、遺言作成時に第一順位の相続人でなければ証人・立会人となれます。
  • ②子の配偶者については、子の配偶者は、推定相続人の配偶者に当たり、証人・立会人になれません。

ご回答(ご解説)

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証人・立会人の役目

自筆証書遺言を除く遺言には証人又は立会人が必要です。
証人とは、遺言の作成に立ち会い、作成された遺言が遺言者の真意に出たものであることを証明する者であり、
立会人とは、遺言作成の場に居合わせて、遺言の成立の事実を証明する者をいいます。
証人は遺言の内容を知っていなければなりませんが、
立会人は遺言の内容についてそれが真実であることを証明する責めを負わされることはありません。
証人・立会人は、遺言の作成を証明する人であり遺言作成に関し重要な地位にあるため、証人・立会人は、それに適した能力を持ち、利害関係を有しない者でなければならないとされています。

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証人・立会人の法定の欠格事由

民法は、①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、
書記及び使用人は、証人・立会人になることはできないとしています。

未成年者

未成年者は十分な意思能力を有さないため証人・立会人の欠格者とされています。
未成年者は、法定代理人の同意があっても証人・立会人となることができません。
なお、民法の一部を改正する法律(平成30年法律59号)により、成年年齢が18歳に引き下げられましたので、
令和4年4月1日施行日以降は、18歳以上の者は未成年者ではありませんので、証人となることができます。

推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

推定相続人や受遺者は直接的に、推定相続人・受遺者の配偶者・直系血族は間接的に遺言の内容に関し強い利害関係を有することから欠格者とされています。
推定相続人とは、遺言作成時に第1順位の相続人をいい、受遺者とはその作成された遺言によって遺贈を受ける者をいいます。
そのため、遺言者に子や妻がいる場合、兄弟は証人となることができます。
仮に遺言作成後に遺言者より前に遺言者の妻子が死亡し、兄弟がその時点で推定相続人になったとしても、
妻子生存時に作成された遺言の効力には影響がありません。
また、配偶者には推定相続人の配偶者も含みます。
推定相続人の配偶者も受遺者の配偶者と同様に強い利害関係を有することや条文の規定の仕方からすれば妥当と考えます。
したがって、事例のご回答は、
遺言者の兄弟も第1順位の相続人でなければ証人・立会人となれますが、推定相続人である子の配偶者は証人・立会人になることはできません。』となります。

秘密証書遺言について
秘密証書遺言は、遺言の内容や受遺者を知っているのは遺言者のみとなるため、
これに立ち会う証人は、遺言書が封じられていることを知るに過ぎないことから、実質的には立会人といえます。
その場合、遺言の内容を知らないため、秘密証書遺言では推定相続人や受遺者も証人・立会人となることもできるとも考えられますが、判例は秘密証書遺言でも、受遺者は証人・立会人になれないとしています。

公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

公証人の関係者であって、遺言者に影響を与えるおそれがあるため、欠格者とされています。
ここでいう公証人は、当該遺言の作成に携わる公証人を指します。

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証人・立会人の事実上の欠格事由

法律上欠格者として挙げられていない者についても証人・立会人となることに適さない者は、いわゆる事実上の欠格者として、
証人・立会人になることができません。
以下、事実上の欠格者に関し、例を挙げご説明します。

署名することができない者

証人は署名が必要であるため、これができない者は証人・立会人となれません。

遺言者の口授を理解できない者

証人は、死亡危急者遺言では遺言者の口授の筆記を、船舶遭難者遺言では遺言の趣旨の筆記を、それぞれ課せられています。
筆記を行うのは証人のうち1人ですが、証人全員が遺言者の口授の内容を理解できなければ実効性がないため、
証人・立会人は遺言者の口授を理解できる者でなければなりません。

筆記の正確なことを承認する能力のない者

証人は、公正証書遺言や死亡危急者遺言において筆記の正確なことを承認した後、署名押印することが求められており、
筆記の正確なことを承認する能力のある者でなければなりません。
もっとも、判例は、目の見えない者は、人違いがないこと及び遺言者が真意に基づき遺言の趣旨を口授することを確認する能力を欠いているものではないなどとして、民法所定の欠格者でも、事実上の欠格者でもないとしています。

口のきけない者

死亡危急者遺言では証人のうち1人が遺言の趣旨を口授して、遺言者及び他の証人に口授しなければならないため、
口のきけない者は事実上の欠格者となるという見解もありますが、死亡危急者遺言の読み聞かせを行う証人以外にはなれる
とする見解もありました。
しかし、口のきけない者については、平成11年の民法改正により口のきけない者であっても、通訳人の通訳により遺言の内容を確認することができることとなったため、事実上の欠格者にならないのではないかと思われます。

法定代理人(親権者・成年後見人)・保佐人

法定代理人は、未成年者や成年被後見人の財産管理権を有するため、また、保佐人も同意権等財産に対し関与するため、
未成年者・成年被後見人・被保佐人の遺言に影響を与えるおそれがあるため、証人となり得ないとする見解と、民法974
条が制限的列挙の規定であることから、欠格者とならないとする見解があります。
争いがあることからすると、できる限り法定代理人を証人・立会人とすることは避けた方がよいと考えます。

遺言執行者

判例は、利害関係を有する者でなければ証人となることができるとしています。

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欠格者が立ち会って作成された遺言の効力

証人又は立会人の欠格者が立ち会って作成された遺言は、方式を欠くものとして遺言全体が無効になるのが原則と考えます。
もっとも、「遺言公正証書の作成に当たり、民法所定の証人が立ち会っている以上、たまたま当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても、この者によって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなどの特段の事情のない限り、当該遺言公正証書の作成手続を違法で」無効であるということはできないとする判例があります。

まとめ・所感

公正証書遺言作成の際の、証人(立会人)選びは意外と難しいものです。
この事例では、兄弟に証人(立会人)をお願いすることができるのですが、実際は、兄弟に財産の内容を知られたくないという遺言者が
大半です。
当事務所でご依頼いただいた場合は、公正証書遺言の証人(立会人)は、当事務所の者がなりますので、
ご自身で探していただく必要はありません。
お困りの場合は、お問い合わせください。

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