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遺言書があったが、遺言執行者の指定がない!どうする?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
遺言書が見つかってその内容を確認すると、遺言執行者の指定がないことがあります。
この場合、どのように手続きをすれば良いでしょうか?(今回は遺贈のケースです)
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
長年交友関係にあった方が、
その所有不動産を含む全財産を私に遺贈する内容の遺言書を残して亡くなりました。
しかし、遺言執行者の指定はありません。また、この方には相続人はいません。
このような場合、どうすればよいのでしょうか?
ご回答のポイント
- 遺言書に遺言執行者の指定ないし、その指定を第三者に委託されていない場合には、
家庭裁判所に対して利害関係人は遺言執行者の選任を求めることができます。
ご回答
遺言執行者の選任
遺言者は、遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができます。
指定の遺言執行者がないとき、またはなくなったとき、つまり委託を辞退したとき、未成年者や破産者であるとき、
解任・辞任したときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができます。
特定遺贈の場合、
遺贈による不動産の取得登記は、判決による場合を除き、
登記権利者である受遺者と登記義務者の地位を承継した相続人または遺言執行者との共同申請によることになります。
したがって、法定相続人に対して登記手続き請求をする方法も取れますが、
遺言執行者がいれば、遺贈の履行は遺言執行者のみがすることができますから、その選任が認められます。
包括遺贈の場合は、
執行を要せずにその内容を実現できるので、遺言執行者選任の必要がないとする学説もありますが、
登記実務上は、特定遺贈の場合と同様、受遺者と相続人または遺言執行者との共同申請により登記することとされています。
この立場から、包括遺贈がなされたが、相続人も遺言執行者もない場合には、
登記手続のために遺言執行者を選任する必要があるという決定があります。
遺言執行者選任申立てに基づく審理手続と効力
⑴ 遺言には、遺言の内容を実現するために、遺言執行者を要するものと要しないものとがあります。
遺言者の意思を実現するための執行は、遺言者の意思を適正に実現することが要求される反面、相続人の利益と相反することにもなるので、その執行に当たる人物は厳選されなければなりません。
⑵ 家庭裁判所は候補者の意見を聴かなければなりません。
意見聴取は、その機会を与えればよいと解されており、実務では審問に限らず就職承諾書や書面照会に対する回答書の提出等の方法も代用されます。就職の諾否、適格性の有無、遺言の内容、執行の難易等の事情が審理されます。
⑶ 相続人は、相続人の資格とまったく相容れない内容の執行の場合を除いて、執行者となることができます。
未成年者および破産者は、遺言執行者となることはできません。
⑷ 選任審判は、執行者に告知されて効力を生じます。
選任審判に対して即時抗告は認められていません。利害関係人は、申立却下審判に対し即時抗告をすることができます。
遺言執行者の任務
財産目録の作成(民1011)、遺言執行者の権利義務(民1012)、遺言による推定相続人の廃除(民893)、廃除の取消し(民894)、遺言による認知(戸64)、廃除または廃除の取消し(戸97)があります。
まとめ・所感
今回の事例では、相続人がおらず、第三者(私)への包括遺贈の遺言書と考えられます。
この場合、故人が所有していた不動産の登記をするためには、遺言執行者の選任が必要であり、家庭裁判所に申立てをする必要がある、
というのが結論です。
遺言執行者の位置付けについては、細かいところで解釈が難しいところがあります。
なので、これから遺言書を書くことを検討されている方は、遺言執行者の選任を遺言書に書いておくことが無難です。
ご不明な点等ございましたら、ご相談ください。