包括遺贈とは?包括遺贈の執行について

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
包括遺贈とは、「私の全財産の2分の1を友人に遺贈する。」といったように、
財産の全部又はその分数的割合による一部分を包括して遺贈することをいいます。
遺言書によって、包括遺贈をするのですが、その効力や遺言執行者がどのように執行すべきか等について、
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。

目次

ご相談事例

遺言書に「私の全財産の2分の1を友人に遺贈する。」と記載されていました。
遺言執行者となった私は、どのように対応すればよろしいでしょうか?

ご回答のポイント

  • 受遺者に対して遺言の内容、遺産の内容(債務内容を含む)等を通知して、その受諾の意思を確認します。
  • 財産目録を作成し、それを全相続人に交付し、遺産分割協議や遺留分侵害額請求の動向を確認し、
    確定した後に遺言の現実化のための執行行為を行うことがよいと思われます

ご回答

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包括遺贈の効力

財産の全部又はその分数的割合による一部分を包括して遺贈することを包括遺贈といいます。
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有します
したがって、積極財産及び消極財産いずれの財産についても承継することになります。
なので、遺言執行者としても、基本的には受遺者を一相続人として扱えば足りることになります。

しかし、遺贈は法定相続分の相続と異なり第三者に対抗するためには対抗要件を具備する必要があり、
また、包括遺贈は特定遺贈の場合や特定財産承継の場合と異なり、遺言執行者に対抗要件を具備する権限がありませんので、
遺言執行者としてはその点に留意する必要があります。

遺贈とは…
亡くなった方(被相続人という)の遺言に則り、法定相続人以外にその遺産の一部または全部をゆずることを指します。

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包括遺贈が判明した後に行うべきこと

遺言に包括遺贈の記載があることが判明した後に遺言執行者としては、関係者(相続人、受遺者及び銀行等)に遺言書の写しを送付しておく必要があると思われます。
法定相続人や銀行が、遺言書の存在を知らない場合には、法定相続に応じた相続財産の分割がなされるおそれがありますし、遺留分侵害額請求権行使の時効期間が「遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から進行するとされているため、できるだけ早期に遺言の内容を通知しておくことが望ましいからです。

遺言執行者とは…
遺言書に書かれた相続の内容を実現するために手続きを行う人です。

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財産目録の作成と相続人への交付

包括遺贈がなされた場合、遺言執行者は相続財産の財産目録を作成し、これを相続人に交付しなければなりません
したがって、遺言執行者としては、包括遺贈の記載があることを判明した直後、速やかに相続財産を調査しておく必要があります。
この作業が遅れると、後に遺産がほかにもあったのではないか等の疑いを抱かせる原因となり、無用の混乱を招く可能性があります。
ただし、遺言の内容が認知等の財産に関しないものであれば、財産目録を作成する必要はありません。

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財産目録の意義等

この財産目録は、後日行う計算報告の基礎となりますし、
相続人及び受遺者が相続や受遺を承認するか放棄するかの判断資料となります。
したがって、積極財産及び消極財産いずれもの調査を行い、作成する必要があります。
遺言執行者は、財産目録を作成するに当たり、相続人が立会いを求めてきたときは、立会いを認めなくてはいけませんし、相続人が公証人に財産目録を作成させるよう求めてきたときにもその求めに応じる必要があります。
財産目録作成の費用は、相続財産の負担となります。

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包括遺贈執行の時期

まず、包括遺贈においては、条文上遅滞なく相続人に財産目録を交付しなければならないとされていることとの関係上、
執行は財産目録の交付後が望ましいと思われます。
また、遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の行使の動向に注意して行う必要があります。
執行を終え、受遺者が遺産を費消した後に遺留分権利者から遺留分を請求された場合の対応が困難となってしまうからです。
ですので、遺言執行者としては、遺留分侵害額請求の可能性が残されている間は、諸般の事情を考慮し、慎重に移転登記、債権の譲渡通知等の時期を見極める必要があります。

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包括遺贈の承認・放棄

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するということで、相続人と同様、相続放棄に関する規定の適用があり、
包括遺贈があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述、限定承認の申述をしなければ、
単純承認しものとみなされることに注意しなくてはいけません。
なお、特定遺贈に関しては、放棄は時間・方法に制限はないものと考えられています。

まとめ・所感

この事例では、包括遺贈の執行を行いやすくなるかどうかは、遺留分侵害額請求権行使の動向にかかっているといっていいと思います。
遺贈の事実の通知、遺産目録の要旨は速やかに内容証明郵便で通知しておき、消滅時効の起算点を明確にすることが大事です。
また、包括受遺者となった方は、遺留分侵害額請求権行使の対応はもちろん、相続放棄等する場合には、3ヶ月の期限があることにも
注意が必要です。
相続人と同一の権利義務があることをお忘れなく、ご対応いただければと思います。

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