包括遺贈と特定遺贈の違い!相続で注意すべきややこしいポイントを解説します!

こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
遺言書にて、相続人以外の人または法人に遺産をあげることを、遺贈といいます。
この遺贈は、「包括遺贈」と「特定遺贈」という2つに分かれており、遺言書の書き方によって、どちらになるか決まります。
ただ、この2つを理解せずに、遺言書を書くと、相続発生後に相続人や受遺者(遺贈を受ける人または法人)が困ることになるのです。
相続において、3本の指にはいるといっていいほど、ややこしく注意しなければいけないポイントですので、以下解説します。

目次

「包括遺贈」と「特定遺贈」とは?

遺贈とは、遺言によって財産を無償で与えることです。
遺贈について、民法964条は、「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」と規定しています。
遺贈は、包括遺贈と特定遺贈とに分けられます。

包括遺贈とは…
例えば、「遺産の全部」又は「遺産の2分の1」など、遺贈者が遺贈の目的を遺産に対する割合をもって示す遺贈です。
包括遺贈の場合は、遺産の全部あるいは遺産の2分の1というように遺産に対する割合をもって受遺者に与えられる財産が指定され、
包括受遺者は遺言によって定められた割合で被相続人の権利義務を承継します。
被相続人の権利義務を割合をもって承継するという点で、包括受遺者は相続人と同様の地位にあります。
そのため、民法990条は、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と定めています。
包括受遺者が遺贈を放棄する場合、相続の放棄と同様、
自分のために包括遺贈があったことを知った時点から3か月以内に、家庭裁判所で遺贈の放棄の手続をとる必要があります

特定遺贈とは…
例えば、特定の土地、建物など、具体的な財産を遺贈すると定める遺贈です。
特定受遺者は、相続人と同様の地位ではなく、特定の財産を譲り受けた受贈者と同様の地位に立ちます。
遺贈の放棄について、特定受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができます。

相続税について

包括遺贈・特定遺贈ともその受遺者は、相続人と同様に、相続税を納める義務を負います。(厳密にいうと少し違いますが、わかりやすく表現しました)
また、相続税の申告書の提出(提出先:税務署)についても、
包括遺贈・特定遺贈とも、基本的に相続人と申告書を共同提出する必要があります。

相続税の基礎控除について

相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
上記の通り、包括受遺者は相続人と同様の地位にありますが、相続税の基礎控除額の算定に当たっては相続人と扱われません。
よって、計算式の「法定相続人の数」に、包括遺贈者は含まれませんので、ご注意ください。
また、特定受遺者も含まれません。

不動産取得税について

不動産取得税が課税されない場合として、
相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む)による不動産の取得」が規定されています。
相続による権利義務の包括的承継による所有権の移転を形式的な所有権の移転であるとみて非課税とする規定です。
したがって、包括遺贈による不動産の取得については、不動産取得税は課税されません。
一方、特定遺贈による不動産の取得については、不動産取得税が課税されます

譲渡税ついて

譲渡税とは、売却等したときに利益がでていた場合にかかる所得税です。
では、遺言によって「不動産等を換価した上で、その売却資金を遺贈する」と書かれていた場合はどうなるでしょうか?

特定遺贈の場合(受遺者は法人・個人)は、その売却資金を受けた人は、譲渡税の納税義務はありません。
譲渡税を払うのは、相続人になります。
相続人からすると、「自分はもらっていないのに、譲渡税は払わないといけないのか」ということになり、揉める可能性が高くなります。
一方、包括遺贈の場合は、包括受遺者が譲渡所得税を申告納税することが可能と思われます。
よって、換価金を受け取らない相続人に譲渡税が課税されることはありません。

特定遺贈の場合は要注意!
売買契約書が見当たらない等で遺言者の取得費(購入価格)が不明である場合、結果として多額の譲渡税が発生する場合があります。
相続人に譲渡所得が認定される結果、換価翌年度の相続人の社会保険料や扶養認定、各種補助金・助成金の所得認定にも影響を及ぼし、
大きなトラブルに発展します。ここは本当に要注意です。

みなし譲渡税について

みなし譲渡税は、受遺者が法人になる場合にかかります。
「みなし」ですので、実際に換価等をしたときにかかるわけではなく、
遺言によって「不動産等を〇〇法人に遺贈する」と書かれていた場合等に課税されるのです。ややこしすぎますよね。

特定遺贈の場合は、法人にみなし譲渡税の納税義務はなく、みなし譲渡税を払うのは、相続人になります。
上記と同様、「自分はもらっていないのに、みなし譲渡税は払わないといけないのか」ということになり、揉める可能性が高くなります。
一方、包括遺贈の場合は、みなし譲渡税は、当該法人がみなし譲渡所得税を納税すれば相続人が納税する必要はありません。

その他、色々な違い

  • 遺産分割協議
    包括遺贈の場合…包括受遺者は相続人と遺産分割協議に参加して遺産分割をする必要がある
    特定遺贈の場合…遺産分割協議はしない
  • 相続債務
    包括遺贈の場合…一定割合の相続債務は負担する
    特定遺贈の場合…遺言書で指定されない限り相続債務は負担しない
  • 相続税に2割加算
    配偶者や一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)でない人は、
    算出された相続税に対して2割を加算して納税する必要があります。
    包括遺贈・特定遺贈とも、その受遺者が上記に該当しない場合は、2割加算の対象となります。
  • 登録免許税(登記のときにかかる税金です)
    相続人が不動産を相続する場合の登録免許税は0.4%ですが、包括遺贈・特定遺贈の場合は、ともに2%となります。
  • 債務や葬式費用の控除
    包括遺贈の場合は債務控除可能ですが、
    特定遺贈の場合、債務控除ができませんので、相続税が高くなる可能性があります。

まとめ・所感

いかがでしょうか?
専門家でも混乱する議題ですので、難しかったと思います。
覚えておいていただきたいのは、
遺言にて、相続人以外の人または法人に、遺贈(寄付)する 場合は、注意が必要
だということです。
知識がないと相続人や受遺者を困らせることになりますので、是非専門家にご相談ください。

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