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相続人に判断能力が不十分な人がいる場合、どうやって手続きするのか?
こんにちは。こうづ行政書士FP事務所 行政書士の髙津です。
相続手続きは、相続人全員で話し合いをして財産の分け方を決めますが、相続人の一人が例えば知的障がい者であった場合、
どのように手続きをすれば良いでしょうか?
ご相談の実例をもとに、以下簡単にまとめました。
ご相談事例
夫が亡くなりました。
夫名義の土地、建物や預貯金等について遺産分割を行う必要がありますが、
私の息子は知的障害者で一人で手続を行うことには不安があります。
このような場合、どのように遺産分割手続を進めていけばよいのでしょうか?
ご回答のポイント
- 相続人の中に、「精神上の障害により判断能力を欠く常況にある」とまではいえなくとも、
判断能力が不足するために単独で遺産分割をすることができない者(事件本人)がいる場合には、
援助の必要性に応じて、保佐人または補助人の選任をすることになります。
ご回答
保佐開始の申立て
本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である」(判断能力が著しく不十分である)場合には、
家庭裁判所に保佐開始の申立てをし、本人が、選任された保佐人の同意を得て、遺産分割を行います。
または、保佐開始の申立てとともに代理権付与の申立てをして、保佐人が遺産分割についての代理権を取得したうえで、
選任された保佐人が、本人に代わって遺産分割を行います。
保佐命令の審判の効力が生ずると、本人が財産の管理者の同意なくして行った民法13条1項記載の行為については、
取消すことができます。
補助開始の申立て
本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」(判断能力が不十分である)場合には、
家庭裁判所に補助開始の申立てをするとともに、同意権付与の申立てをして、補助人が遺産分割についての同意権を取得したうえで、本人が、選任された補助人の同意を得て、遺産分割を行います。
または、補助開始の申立てとともに、代理権付与の申立てをして、補助人が遺産分割についての代理権を取得したうえで、
選任された補助人が、本人に代わって遺産分割を行います。
補助命令の審判の効力が生ずると、本人が財産の管理者の同意なくして行った民法13条1項の行為のうち、
同意権付与の申立ての対象となっている行為については、取消すことができます。
遺産分割と保佐人、補助人の権限
成年後見人には、包括的な代理権および取消権が与えられていますが、
保佐人、補助人に法律上当然に与えられている権限は限定されています。
保佐人には、
遺産分割を含む重要な行為については同意権・取消権が付与されていますので、選任された保佐人の同意を得て、本人が遺産分割をすることができます。
しかし、保佐人には、いかなる行為についても、法律上当然には代理権は付与されていませんので、
保佐人が本人を代理して遺産分割を行うためには、遺産分割について代理権付与の申立てをしなければなりません。
代理権付与については、本人の同意が必要です。
補助については、
補助開始の審判をすること自体について本人の同意が必要です。
また、補助人には、同意権も代理権も法律上当然には与えられていません。
したがって、本人が遺産分割を行うについて、補助人の同意を得ることが必要とするならば、
遺産分割について同意権付与の申立てをしなければなりません。
補助人が本人を代理して遺産分割を行うには、遺産分割について代理権付与の申立てをしなければなりません。
いずれの場合にも本人の同意が必要です。
なお、遺産分割そのものではありませんが、本人が自己の相続分を処分するおそれがある場合には、
相続分の処分等遺産に関する管理処分行為も同意権の対象としなければなりません。
本人が、保佐人の同意なくしてした遺産分割協議の意思表示、あるいは補助人に同意権が付与されているにもかかわらず補助人の同意なくしてした遺産分割協議の意思表示は、本人、保佐人、補助人らが取り消すことができます。
まとめ・所感
後見制度には、成年後見・保佐・補助の3つがありますが、そのうち2つを書きました。
成年後見については、以下コラムをご参照ください。
冒頭にも書きましたが、遺産分割協議は相続人全員の意思によって決まりますので、意思が不十分な方がいれば、その代理人をたてなければなりません。
日本の法律において、この部分は守られていますので、そのまま手続きを進めてしまうことがないよう、ご注意ください。